資生堂ギャラリーでは、2014年7月18日(金)から8月22日(金)まで、現代芸術活動チーム目【め】による「たよりない現実、この世界の在りか」展を開催します。
目【め】は、アーティスト荒神明香、wah documentらによって組織された現代芸術活動チームです。
一般募集したアート作品のアイデアを実現に移す表現活動体wah documentのメンバーである南川憲二と増井宏文が、荒神のアイデアを実現すべく2012年より活動を始めました。2013年に瀬戸内国際芸術祭のプロジェクトとして行った「迷路のまち~変幻自在の路地空間~」では、空き家を改装して室内にいくつもの壁やドアを配置することで異空間を演出し、大きな話題となりました。また同年秋からは、宇都宮美術館の館外プロジェクトとして、市民と共に、大きなおじさんの顔の立体物を屋外に浮かべることをめざす「おじさんの顔が空に浮かぶ日」が進行中です。2014年の三菱地所アルティアムでの個展「状況の配列」では、ギャラリーを倉庫のような空間に仕立てて様々な仕掛けを施しました。
目【め】として東京で初めてとなる本展では、資生堂ギャラリーを異空間に変容させる新作インスタレーションを発表します。本作は荒神が5歳の頃、幼稚園の体操の時間に寝転がって空を見ていた時、だんだん空に落ちてしまいそうな感覚に陥り、周りの友だちの体が地面にくっついているのを確かめた体験がきっかけとなっています。荒神はこの時に「たった2本の足の、しかも靴の裏側だけを地面にへばりつかせているだけで、この地点に身体を留め続けることが困難だと感じた」と言います。私たちは重力のある世界で当たり前のように暮らしていますが、子供の頃、地球が丸いと聞いて落ちることなく留まっていられるのを不思議に思った経験は、荒神だけでなく誰にでもあるでしょう。また地球が自転しながら太陽の周りを公転していることを思い起こせば、私たちは一瞬たりとも同じ場所にいることはないのです。普段意識しないこうした視点から自分の存在を捉えると、広大な宇宙空間に引き込まれずにここに存在していることは実に不可思議です。しかし、こうした状況こそが現実であると言えるでしょう。
本展では、そんな「たよりない現実」に目を向ける機会として、どこかで見たことのあるような室内空間がギャラリーの中に出現します。観客はそれを体感する中で、自らの記憶と重ね合わせつつも、ある立体的な仕掛けによって次第に違和感を感じることでしょう。その時の違和感は、荒神が幼い頃、空を見上げた時の感覚と同じようなものかもしれません。観客の身体感覚を揺るがせ、私たちが住む「この世界の在りか」について想像力を開かせる体感型の展示にぜひご期待ください。