資生堂ギャラリーでは、2017年11月21日(火)から12月24日(日)まで、THE EUGENE Studioの個展『1/2 Century later.』を開催します。THE EUGENE Studio(ザ・ユージーン・スタジオ)は、現代美術を中心に、従来の境界線を押し広げて次の社会を創造していく全く新しいアーティストです。現在、チームラボなどとともに世界が注目する日本のアーティストチームとして脚光を浴びており※1、その活動は、21世紀のアーティスト像を確立するものといって良いでしょう。
本展でTHE EUGENE Studioは、展覧会を終えるとともにちょうど「半世紀」が経過することになる『1968年』※2をひとつのモチーフに、『1/2 Century later.』―つまり、「あれから半世紀(あるいはこれから半世紀)」を主題とした未発表のインスタレーションを展示します。THE EUGENE Studioはいままで、過去の未来像に対比させ、現在の「私(たち)」が現実とのつながりの中で作り出すことのできる新しい鮮やかな未来像を思索してきました。展示会場では、「過去の物語で描かれた未来像の遺産」をモチーフとしたガラス張りの大型インスタレーションと、それを取り囲むように、次の未来を反映する作品群が立ち現れます。
彼らが描く未来は、バイオテクノロジーと農業が融合した穏やかな生活を描いた平面作品(Agricultural Revolution 3.0)、人工知能エージェンシーに纏わる物語の脚本とスケッチボードの一部、そして本展の中心ともいえるソーシャル時代の構造を採り入れた集合的な手法で、新たなグローバリゼーションへのささやかな期待を告げる作品(White Painting)。半世紀前の未来像のレガシーと、私たちの生きる、新しい、しかし地続きの未来の始まりが会場内で対峙し合います。来場者は、洗練された世界観とスペクタクルな展示空間の中で新しい社会と響き合う感情を体感することでしょう。それは、21世紀の科学とテクノロジーの進展とともにアートによって照らし出された新たな未来の価値を知覚することであり、言葉にしていく体験でもあります。
近年THE EUGENE Studioは、本展でそのドローイングが展示されるバイオテクノロジーと農業を扱った作品「Agricultural Revolution 3.0」において、リサーチやカンファレンスにケンブリッジ大学や金沢21 世紀美術館、OMA NY などからゲストが参加し話題を呼び、またアメリカ三大SF賞を受賞したSF作家ケン・リュウとの共同制作のほか、映画制作に本格的に着手するなど活躍の場を国際的に広げています。
アートそれ自体の歴史、美術史や過去の世界の事象と積極的に向き合うと同時に、人工知能や都市、バイオテクノロジー領域といった先端分野の研究開発に招聘されるなど多角的な活動を通じて今日の現実社会と積極的に関わり合うことで、過去とも現在ともつながりのある「地続きの未来」の地図を更新し続けています。こうした活動は、純粋な現代アートのコンセプチュアルな創造性と文脈性、フォームを包含しつつ、アクチュアルに次の社会を創造していくものといえます。
資生堂は美しい生活文化の創造を使命とし、資生堂ギャラリーの活動を通じて時代の新しいアートが反映する未来像を世の中と共有することで社会の新しい価値観を私たちの生活文化の創造へと結びつけてきました。本展が多くの人々にとっての未来地図を更新する端緒となることができれば幸いです。
※1 今年出版された『アート×テクノロジーの時代』(宮津大輔、光文社新書) ではチームラボやタクラム、ライゾマティクスとともに世界が注目する日本の4つのアーティストチームとして紹介されています。
※2 1968年は、スタンリー・キューブリックの映画『2001年 宇宙の旅』や、映画『ブレードランナー』の原作となったSF小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』(フィリップ・K・ディック)が発表された年であり、今日にも残る科学とテクノロジーの発展によって描かれた象徴的な未来像が決定づけられた年ともいえます。