第2回 shiseido art egg賞

様々な芸術ジャンルで活躍する3人の審査員が、資生堂ギャラリーの空間に果敢に挑み、新しい価値の創造をもっとも予感させる展覧会を選び、shiseido art egg賞を贈ります。
受賞者には、記念品と賞金20万円が贈呈されます。

第2回shiseido art egg賞は槙原泰介さんに決定いたしました。

4月10日に行われた授賞式において、槙原さんには岩田副社長より記念品および賞金20万円が贈られました。

受賞の言葉

受賞の言葉

応募からの長く充実したプログラム、こんなかたちで卒業できて嬉しい限りです。僕にとって、「30歳の卵」。とても励みになります。大事にします!作品はついに写真になってしまいました。また僕のつくることを楽しみにしてくれるひとがいれば、嬉しく思います。たくさんのご来場、ありがとうございました。

審査総評

青木野枝(彫刻家)、今村源(美術家)、深澤直人(プロダクト・デザイナー)の3人の審査員は、3ヶ月にわたるshiseido art egg展開催期間中に3つの展覧会を鑑賞し、審査にのぞみました。shiseido art egg賞の候補について、審査会開始当初は意見が分かれ、賞の選出は難航しましたが、審査員が各展覧会について意見交換を行い、十分な審査を重ねた結果、槙原泰介さんの展示が選ばれました。受賞者のみならず3つの展覧会すべてに対して様々な意見が寄せられ、実際にクリエーションに携わる審査員ならではの視点が提示された2時間でした。

審査員所感

受賞者 槙原泰介展 《flooring(フロアリング)》

2008年2月8日~3月2日

作品をモノとしてではなく、素材の結び付け方で見せるタイプのアーティスト。周囲に浮遊するいくつものエレメントが自分のなかで結びつき、何かが立ちあがってくるときを待っている。到達までに時間がかかるが、見えてしまうと早く、どのような素材でも編集し、答えを導きだせる能力を備えた、安定した感がある。
今回の展示では、シンバルを使ってギャラリー空間のテラス部分に面を作り、上と下との風景をがらりと変えるなど、「面」の意図のねらい通りのものができあがっており、ディレクションの巧みさが光っていた。

最初の印象では、展示全体が整然と決まりすぎていた感もあり、均衡を破る要素がほしかった、またそれができる作家 であるという思いがあるが、落ち着いて見ると、こういったスマートさに徹したプランこそ、この資生堂ギャラリーという場においての展示にふさわしい、という彼の判断あっての展開であったのだと気付かされる。コンセプチュアルな作品であるにもかかわらず、言葉にできない、また言葉にしようとしない、自身でも気付いていない魅力があり、これから知らない何かが生まれそうな、未知数の魅力がある。これからの展開に大いに期待したい。

展覧会を構築するにあたって、小展示室の存在や、天井の高さ、テラスの存在といった、建築家のビジョンに影響を受けざるを得ないところがあったと思う。アーティストによっては、この空間で展覧会を行うことがフェアでないこともあるかもしれないが、そういった認識をもった上で、ギャラリーの空間という背景を自分の世界に作りこんでいくという選択もある。自分の作品と空間との関係をどう解釈しているかも審査のひとつのポイントになった。
今回は、空間に応えようとすることで自身の作品をいかすことにもっとも成功したと思われる点が評価され、第2回shiseido art egg賞に決定した。

窪田美樹展 《DESHADOWED-かげとり》

2008年1月11日~2月3日

思想でおいきれない自身の感覚を、身体を通して客体化し制作しようとする。制作行為の過程の偶発的なものにより、魅力が生まれてくる作品。
制作の意志、プロセスが作品に現われており、すぐれたアーティストとして、すでに安定性のある仕事をしていると思う。ポートフォリオにあるこれまでの作品や展覧会とあわせて、総合点的に高く評価したいアーティストである。

窪田の作品は、何かよく分からないもの、何だろうと思わせるもの、どこへも行かないところで成立している魅力、面白さがあるが、今回は、ある手法をものにして自身の作品への理解も深めたが故に、作品を「説明」しようとしてしまったのではないだろうか。ある手法を発見し始めたときの、自分でもよくわからない新鮮さや強さなどが、今回比較的弱くなってしまっている印象を受けた。

作品と空間とのあり方を探るなかで見せた、インスタレーション的な方向は、これまでの窪田にはない展開である。果敢に空間にチャレンジを試みたが、資生堂ギャラリーの特別な空間に応えようとする意識が強すぎて、ギャラリーという別のスケールと視点が入りすぎてしまったのかもしれない。作品個々の完成度の高さと厚みを見せきれなかった感がある。作家としての意識に厚みのある人なので、今回の展示で得たものは大きいはずである。今後の飛躍に期待したい。

彦坂敏昭展 《テサグリの図画》

2008年 3月7日~3月30日

絵画に取り組む際に、すでに思い描くイメージやビジョンから始めるのではなく、動機や根拠のなさというところから制作を始めるという点が、今日的な新しさを持つ作家。制作のシステムを組み立て、選択の結果として立ち現れるものを作品としている。描くということのリアリティーの現代的なとらえ方である。

ただ、この手法から言えば、もっと作品に破綻があってもよいのではないかとも感じられた。システムに則って制作することによる、たとえば増殖を繰り返し、歯止めが利かなくなるような破綻も、絵画として成立する瞬間といったものに疑いを投げかける契機ともなりうる。今はまだ、既存の絵画的フレームという意識にとらわれ、絵画として破綻なくまとめようとしてしまっているのではないだろうか。絵画としての区切り、枠といったものを、自分で選び取っていってほしい。

展示に関しては、自分が今どうしたいのか、どう見せていきたいのかについて、自分自身で明確に理解しているように思う。資生堂ギャラリーの特異な空間に引っ張られすぎず、「作品から来る場所」を見極め、自分の世界を築くことに成功しており、非常に安定した印象を受けた。
今後の展開として、絵画を中心として考えていくのか、それともシステムを中心として進めていくのか、その選択如何で方向も変わっていくだろう。大きな転換の可能性を楽しみとしたい。

審査員

青木 野枝(彫刻家)

青木 野枝(彫刻家)

東京生まれ。1983年武蔵野美術大学大学院造形研究科(彫刻コース)修了。鉄を溶断、溶接し、まわりの光や空気が揺れるような軽やかな彫刻を制作している。資生堂ギャラリー(1994年)、国立国際美術館(1994年)、目黒区美術館(2000年)など国内での個展のほか、2007年には韓国のヘイリー芸術村でも個展を開催。第五次椿会メンバーとして2001年から2005年まで毎年「椿会展」に参加。現在多摩美術大学准教授。

今村 源(美術家)

今村 源(美術家)

大阪生まれ。1983年京都市立芸術大学大学院美術研究科修了。机・冷蔵庫・椅子・電球など、ごく普通の日用品に手を加えて、何とも摩訶不思議なオブジェにつくり変えるなど、「日常生活」と「美術」との関わりを作品化している。国立国際美術館、伊丹市立美術館(2006年)での個展の他、京都と大阪の画廊を拠点にコンスタントに個展を開催。資生堂ギャラリーの「life/art」に 2001年から2005年まで参加。

深澤 直人(プロダクト・デザイナー)

深澤 直人(プロダクト・デザイナー)

山梨生まれ。1980年多摩美術大学プロダクトデザイン科卒業。2003年 Naoto Fukasawa Designを設立。イタリア、ドイツ、北欧など国内外の大手メーカーとのプロダクトを多数手がける。「MUJI」壁掛け式CDプレーヤー、「±0」加湿器、「au/KDDI」INFOBAR, neonはN.Y.近代美術館(MOMA)永久収蔵品となる。2007年 英国王室芸術協会よりロイヤルデザイナー・フォー・インダストリー(Hon. R.D.I.)の称号を授与される。受賞歴は50賞を超える。無印良品デザインアドバイザリーボード。21_21 Design Sightディレクター。武蔵野美術大学教授、多摩美術大学客員教授。

展覧会「第2回 shiseido art egg」

第2回 shiseido art egg/審査結果

これまでのshiseido art egg賞の結果は下記よりご覧ください。

資生堂ギャラリー公式アカウント